- 【テニスのスマッシュ】打ち方のコツを元テニスコーチがわかりやすく解説
- 【テニスのスマッシュ】おすすめの練習方法を紹介
スマッシュは、他のショットと比べて「ボールの入り方」や「打つタイミング」が難しい…
そんなふうに感じている生徒さんが多かったです。
しかし、毎週レッスンでスマッシュの練習を取り入れコツをつかんでいくと、苦手ショットから好きなショットに変わっていきます。
スマッシュを打てるようになるには、練習量を増やすことが絶対ですが、その過程で身につけたいコツを本記事で解説します。
ただ練習するより早くスマッシュを体得できるはずなので、ぜひご一読ください。
【テニスのスマッシュ】打ち方のコツを元テニスコーチがわかりやすく解説
スマッシュとは、高く上がったボールを相手コートに叩きつけるショットのことです。
頭上で打つため「overhead(オーバーヘッド)」と呼ぶこともあります。(英語ではこちらのほうが一般的。)
「smash = 強打」という意味から1発で決めるショットと思われがちですが、状況によって違ってきます。
もちろん1発で仕留めなくてはならないときもありますが、深いロブをなんとか返すときは無理せずつなぎます。
下記にスマッシュのコツを紹介しますが、練習と同時にそういった状況判断も磨いていけるといいかと思います。
ご紹介するスマッシュのコツは、下記の4つです。
- 「グリップ・打点・スタンス」をセットで考える
- スタートを自動化させる
- フットワークを整理しておく
- 丁寧に打つ
「グリップ・打点・スタンス」をセットで考える
1つ目のコツは、「グリップ・打点・スタンス」をセットで考えることです。
よく「スマッシュはコンチネンタルグリップで」と言われますが、イースタングリップで握っている方がグリップだけ変えてもなかなかうまくいきません。
イースタングリップに適した打点やスタンスで打っているからです。
⬆︎イースタングリップ
⬆︎コンチネンタルグリップ
そのうち、握りがイースタングリップに戻っていくか、コンチネンタルグリップのままイースタングリップの打ち方を続けることになります。
イースタングリップとコンチネンタルグリップでどのように違うのか、打点やスタンスを中心に見てみましょう。(右利きの場合です。)
- 【イースタングリップ】
- →標準の打点がフォアハンドストロークのように前
- →打点エリアが前方に広がる
- →回転はかけづらい
- →オープン〜スクエアスタンスが打ちやすい
- →バックステップで下がりやすい
- 【コンチネンタルグリップ】
- →標準の打点がフォアスライスのように横
- →打点エリアが後方に広がる
- →回転はかけやすい
- →スクエア〜クローズドスタンスが打ちやすい
- →クロスオーバーステップで下がりやすい
イースタングリップは標準の打点が前に遠くなることから、ボールの後ろ側に入る感じになります。
それに対してコンチネンタルグリップは標準の打点が横に遠くなることから、ボールの左側に回り込む感じになります。
打点は1箇所ではありませんが、イースタングリップは前方に広がり、コンチネンタルグリップは後方に広がります。(自分の近くにスマッシュを打ち込む場合は、コンチネンタルグリップでも打点を前方にできます。)
イースタングリップでスマッシュを打つ場合、インパクトでおへそが打つ方角まで回ります。
そうなると、スタンスはフォアハンドストロークのようにオープン〜スクエアスタンスが打ちやすくなります。
しかし、コンチネンタルグリップでスマッシュを打つ場合、身体は回してもインパクトでおへそが打つ方角まで回りません。(ただし、近い距離に打ち下ろす場合は打つ方角まで回ります。)
スタンスは、フォアハンドストロークではなく片手バックハンドストロークやバックハンドスライスのようにスクエア〜クローズドスタンスが打ちやすくなります。
下がって打つとき、イースタングリップは身体を打ちたい方角に向けたまま、バックステップで下がりやすいです。(ただし、頭の後頭部を地面に打ちつける危険があります。)
それに対してコンチネンタルグリップは身体を打ちたい方角まで回す必要がないので、ボールに背中を向けて走る(クロスオーバーステップ)ことが可能です。
スタートを自動化させる
2つ目のコツは、スマッシュのスタートを自動化させることです。
よく使うフォアハンドストロークやフォアハンドボレーは、スプリットステップの後、身体が自然と動きます。
自然とラケットをセットしたり、足がスムーズに動き始めます。
しかし、練習量が不足しがちなスマッシュは、ロブが上がったときに何から始めたらいいかわからずスタートで出遅れやすいです。
スマッシュで返球すると判断したとき、すぐにスタートできればそれだけで成功する確率が上がります。
スプリットステップ後、スマッシュを打つと判断したら、やるべきことは下記のとおりです。(そうでないときもありますが、まずはよく使う基本的な動きを1つ覚えてしまいましょう。)
- 軸足を引く+ラケットのセット
- サイドステップで下がりながらラケットをテイクバック
スマッシュを打つと判断したら、大概は後ろに下がりながら打ちます。
軸足(右利きなら右足)を1歩引き、身体を横向きにします。
それと同時に、両手でラケットを支えながら後方に引きます。
その後、すぐにラケットをテイクバックしながらサイドステップで下がります。
ラケットのテイクバックと同時に、左手を右斜め上方向に伸ばしましょう。
左腕の左側から、ボールを見上げるようにします。
テイクバックが早すぎると動きづらくなりますが、遅すぎて振り遅れるよりはマシです。
スマッシュを打つタイミングに慣れるまでは、早めにテイクバックでかまいません。
フォアハンドストロークで下がって打つときの動きに似ていますが、コンチネンタルグリップで握っているならクローズドスタンスで下がりましょう。
頭上を見ながらボールを追いかけることにも慣れる必要があります。
フットワークを整理しておく
3つ目のコツは、スマッシュのフットワークを整理しておくことです。
スマッシュでは、上がったボールによりどのフットワークを使うか判断する必要があるからです。
スマッシュのフットワークをまとめると、下記のようになります。
- 【移動距離が短いとき】
- →前進・後退ともにサイドステップ
- 【移動距離が長いとき】
- →移動する方向に走る(+サイドステップ)
最初は、2つ目のコツで説明した「サイドステップで下がる」をベースにスマッシュの技術を磨いていきます。
慣れてきたら、スマッシュで打てる範囲を広げるために、フットワークを上記のように使い分けて打つようにします。
移動距離が短く前進して打つときは、サイドステップを使えばOKです。
問題なのは、移動距離が伸びてサイドステップだけでは間に合わないときです。
そんなときは、まず動きたい方向に走るようにします。
長い距離を前進するなら、前へ走りながらテイクバックします。
逆に、長い距離を下がるなら、ボールに背中を向けて後ろへ走りながらテイクバックします。
この下がるときのフットワークをクロスオーバーステップと呼びますが、難しく考えず後ろに向かって走ってください。
どちらも、テイクバックの途中までは両手を使ってラケットを後方へ運びます。
⬆︎すぐに左手をラケットから離してテイクバックに入る
時間がなければそのまま打ちますが、時間に余裕があるときは途中からサイドステップを使ってボールとの距離を調整します。
丁寧に打つ
4つ目のコツは、丁寧に打つことです。
「丁寧に打つ」は非常に曖昧な言葉でコツとは言えないかもしれませんが、わたし自身今も意識していて効果を感じています。
なぜ効果を感じたのか、わたしなりに考えた結果を書いておきます。
一生懸命スマッシュを打ってしまうと、ラケットを振り始めるタイミングがなかなかつかめません。
また、スイングと同時に身体が前に倒れたり、打つ前から行き先を見てしまいます。
これだと、ボールのコントロールが安定しません。
丁寧に打つと、スイングスピードが多少落ちてゆっくりになり、ラケットを振り始めるタイミングを早くしないと間に合いません。
いつもより早くラケットを振り始めることで、次第にスマッシュを打つタイミングがつかめてきます。
さらに、余計な身体の動きを省いて打てるようになり、ボールをコントロールしやすくなります。
【テニスのスマッシュ】おすすめの練習方法を紹介
スマッシュの練習方法はいろいろありますが、基本的な練習(その場にロブを上げてもらい打つ練習や下がりながら打つ練習)を繰り返すだけでも十分な効果を発揮します。
本記事では、プラスアルファとしておすすめできるスマッシュ練習を紹介します。
- 初心者の段階的練習法
- ボールを地面に向かって打つ練習
- 下がるフットワークの練習方法
- ジャンピングスマッシュの練習方法
- 手軽に量をこなせる壁打ち
初心者の段階的練習法
小学生の娘にスマッシュ練習をさせたとき、言われたのがこれです。
球出しを高く上げてしまうと、ボールの落ちるスピードが徐々に上がっていきます。
球技をしたことのない初心者はこわいと感じ、慣れるまでタイミングもつかみづらいです。
なので、まったくスマッシュが打てない場合は、サービスライン(もしくはもっと前)から低めに球出しして、成功体験を増やしていきましょう。
慣れてから徐々に球出しの距離を離したり、球出しの高さを上げていけばOKです。
低い球出しで、スマッシュの大まかな動きを3段階に分けて練習します。
- ボールの落下地点に入ってキャッチ
- ラケットを短く持つ
- ラケットを長く持つ
右利きの場合で説明します。
ボールの落下地点に入ってキャッチ
まずは、ボールの落下地点に入るフットワークを練習します。
身体は横向きになり、ラケットをテイクバックして、左手を右斜め上に伸ばします。
初心者の場合、クローズドスタンスではなくスクエアスタンスから始めましょう。
低めに球出ししたボールを、この形を保ちながら左手でキャッチします。
キャッチが難しい小さなジュニアの場合は、手のひらでボールの下側を触るだけでもOKです。
身体を横向きにしたままボールの落下地点に動くので、前後に移動するときはサイドステップを使います。
左右に移動するときは、前進と後退(バックステップ)すればOKです。
いきなりスマッシュを打たすと、正面を向いたまま前後に動こうとしますので、この練習でサイドステップを使ってボールの落下地点に入ることを覚えます。
テイクバックしたまま動くので、準備も早くなります。
注意点は、左手を右斜め上方向に伸ばしたまま動くことです。
ボールをキャッチするために、左手をいろいろなところに動かさないように気をつけましょう。
ラケットを短く持つ
⬆︎横側から見るとこんな感じ
次に、ラケットでボールを当てますが、グリップの根本付近を握って難易度を落とします。
ラケットを短く持った分、右手とスイートスポットの距離も短くなり、ラケットの重さを感じずに打てます。
同じように、身体は横向きになり、ラケットをテイクバックして、左手を右斜め上に伸ばしたところからスタートしましょう。
右腕を伸ばし、右肩の上辺りに打点をとります。
ラケットは、打点で止めるくらいゆっくり丁寧に振ります。
ラケットを振り始めるタイミングがつかめ、打点も確認できます。
ラケットを長く持つ
⬆︎横側から見るとこんな感じ
いよいよ、ラケットのグリップエンド付近を握りスマッシュしてみます。
身体は横向きになり、ラケットをテイクバックして、左手を右斜め上に伸ばしたところからスタートするのは同じです。
打点で止めるくらいゆっくり丁寧に振るのも同じです。(急に別人にならないように。)
打点が上がり、ラケットの重みを感じるようになるので、その分難しくなります。
ボールを地面に向かって打つ練習
そんな方におすすめしたいのが、ボールを地面に向かって打つ練習です。
サーブやスマッシュでよく紹介される練習なので、やったことがある方もいるかもしれません。
サーブやスマッシュをジュニアに教えるとき重宝するドリルですが、大人でも上記の悩みがある方には有効です。
コンチネンタルグリップに慣れる
サーブやスマッシュでグリップが厚い方がコンチネンタルグリップに修正すると、かなり苦しみます。
いきなりサーブやスマッシュを打っても、ボールの当たりはかすれて左に飛んでいきます。
以前のように、ボールの真後ろ近くをとらえたいときに「ボールを地面に向かって打つ練習」が効いてきます。
やり方を右利きで説明します。
コンチネンタルグリップで握り、右手を顔の前に伸ばします。
右手のひらを下に向け、ラケット面を真下に向けます。
軽くボールを前にトスして、目線の高さくらいでボールの真上をラケット面でタッチするようにします。
トスは、自分で上げても誰かに上げてもらってもOKです。
サーブのトスより、低く前に上げるようにします。
反復して、真下にボールが飛ぶラケット面の感覚を覚えます。
ボールを地面に叩きつける
真下にボールをコントロールできるようになったら、スマッシュのテイクバックをしたところから同じようにやってみます。
スイングをする分難しくなりますが、やることは同じです。
同じインパクトの位置でボールの真上を叩き、地面に向かって打ちます。
↓
右肘が伸びるくらい、打点が前方にあることを覚えておいてください。
慣れてきたら、スイングスピードを上げていきます。
下がるフットワークの練習方法
スマッシュは、フットワークを使いボールを追いかけ、タイミングを合わせながらスイングしないといけないので、慣れるまでは難しいです。
特に、後ろに下がって打つときです。
スプリットステップからの素振りやフットワークだけを練習するのも効果的ですが、実際にロブを追いかけながらフットワークを練習する方法もあります。
もし、後ろに下がるフットワークを鍛えたいなら、スマッシュではなくフォアのハイクリアから練習するとスムーズです。
ハイクリアは、下がりながらハイボレーで返球する難しい技です。
ボレーとは違うリストワークを使います。
ただ、斜め上向きのラケット面を作って山なりに返球するだけならそんなに難しくありません。
ラケットはほとんど振らず合わせるようにすれば、後ろに下がるフットワークを重点的に練習できます。
下記のフットワークをそれぞれ練習しておくと、スマッシュを打つときの負荷を下げることができます。
- サイドステップ
- クロスステップ
- クロスオーバーステップ
クロスオーバーステップは、難しく考えず後ろに向かって走ればOKでしたね。
クロスステップは、サイドステップ同様に身体が横を向きながら足を交互に下げるようにします。
右利きなら、右足を後ろに引いた後、右足の前側から左足をクロスさせて引きます。
この動きを繰り返しながら下がります。
サイドステップとクロスオーバーステップの中間と考えるのがいいかもしれません。
サイドステップとクロスオーバーステップのフットワークができれば、その中間のクロスステップも練習すればできるようになります。
ジャンピングスマッシュの練習方法
来るとわかってても難しいジャンピングスマッシュ。
球出しですらうまく打てないのに、実戦でうまく打てる気がしない…
スマッシュは打てるけど、ジャンピングスマッシュになるとまったく打てない…
なぜ、ジャンピングスマッシュは難しいのでしょうか?
それは、下記の3つをクリアしなくてはならないからです。
- 特殊なフットワーク
- ボールにタイミングよく入る
- ネットから離れて打つ
ジャンピングスマッシュは通常のスマッシュと違い、身体の後方で打つことになります。
当然ながら、通常のスマッシュより返球が難しいボールが上がります。
そのボールをタイミングよく動いて打たなければいけません。
また、通常のスマッシュよりネットから離れて打つ場合が多く、コントロールもシビアになります。
これらをジャンピングスマッシュの特殊なフットワークを交えてやらなければいけません。
もし、このフットワークがスムーズにできなければ、ジャンピングスマッシュの成功はありえないでしょう。
ジャンピングスマッシュの練習でおすすめなのは「素振り」です。
テニススクールでも、ジャンピングスマッシュを練習する前にまず素振りをしてフットワークを確認することが多いです。
ジャンピングスマッシュのフットワークがうまくいかない方のために、2段階の素振り練習を紹介します。
- 打つときの身体の使い方を覚える
- ボールを追いかけるフットワークを加える
打つときの身体の使い方を覚える
最初に、ジャンピングスマッシュを打つときの身体の使い方を練習してみましょう。
ボールを使わず、素振りします。(ラケットを持たなくてもかまいません。)
右利きの場合で説明します。
身体は横に向け、テイクバックしておきます。
後ろにある右足に体重を乗せます。
前にある左足のかかとは地面から浮いている状態です。
この状態から右膝を少し曲げて片足でジャンプしながらラケットを振ります。
ジャンプしながら右足を前方へ上げて、左足1本で着地します。
ジャンピングスマッシュに慣れるまで、スイングはインパクトで止めましょう。
ラケットを最後まで振り抜いてしまうと、ラケットヘッドがすねに当たり、痛い思いをするかもしれません。
フォワードスイングの惰性でフォロースルーをとってしまうくらいがちょうどいいです。
ボールを追いかけるフットワークを加える
次に、頭上のボールを追いかけるフットワークを加えます。
こちらも、ボールを使わず素振りで行います。(ラケットがなくてもかまいません。)
下記2種類のフットワークを加えてみましょう。
- サイドステップで下がる
- クロスオーバーステップで下がる
まず、難易度の低いサイドステップで下がってからジャンピングスマッシュする素振りを繰り返します。
慣れてきたら、クロスオーバーステップ(後ろ向きで走る)で下がってからジャンピングスマッシュにもチャレンジしてみます。
実際には、「クロスオーバーステップ→サイドステップで調整→ジャンピングスマッシュ」の順序で打つこともあります。
ですが、サイドステップのみとクロスオーバーステップのみをマスターしておけば、2種のフットワークを組み合わせるテクニックのハードルを下げられます。
手軽に量をこなせる壁打ち
コートでスマッシュ練習する環境が作れなくても壁打ちできる場所を見つけられたら、手軽にスマッシュの練習量を増やせます。
ボールはいろいろなところに上がるので、自然とフットワークを使い分けながらボールの下に入るようになります。
不安に感じていたスマッシュが、壁打ちの反復練習で自信を持てるようになります。
練習のやり方は下記のとおりです。
- スマッシュのテイクバックを済ませ、トスを上げたボールを地面に打ち込む。
- 壁に跳ね返り、高く上がったボールをスマッシュする。
- 途切れるまでスマッシュを繰り返す。
壁の手前にボールを打ち込むと、壁に跳ね返ってロブのように高く上がります。
そのボールを繰り返しスマッシュします。
最初は、ゆっくり丁寧に打つとつながりやすいです。
スマッシュがつながるようになってから、速度を上げればOKです。(そのときも丁寧に打つことは忘れずに。)
壁打ちでは、実際にコートでスマッシュするときより短い距離に打ち込んでいます。
コートで同じ感覚のスマッシュを打つとネットにかかるので、そこは調整が必要です。
繰り返しになりますが、スマッシュの苦手は練習不足が1番の原因です。
スマッシュの練習をしながら、どんなことに気をつけたらいいか、どんな練習をしたらいいかをまとめました。
この記事が、スマッシュを苦手に思っている方の役に立てばうれしいです。