- 【テニスのフォアハンドのグリップ】握り方の種類と特徴【元コーチが解説】
- フォアハンドはどのグリップから始めるべき?【すべての握り方をさまよった結論】
いろいろな握り方をさまよいましたが、それぞれのメリットとデメリットを体感できてよかったと思っています。
【テニスのフォアハンドのグリップ】握り方の種類と特徴【元コーチが解説】
他のショットと比べると、フォアハンドストロークはグリップの選択肢が多く、テニスの個性が出やすい部分です。
本記事では、フォアハンドストロークのグリップの握り方を種類別に解説しますが、まずはグリップの握り方のポイントを3つ紹介します。
- フォアハンドの握り方は4種類
- 手のひらの斜めのラインをグリップのどの面に合わすか
- 人差し指と中指が少し離れる
フォアハンドストロークの握り方は、大きく分けると下記の4種類です。
- コンチネンタルグリップ
- イースタングリップ
- セミウエスタングリップ
- ウエスタングリップ
本記事では、手のひらの斜めのラインをグリップのどの面に合わすかで分けています。(日本テニス協会のテニス指導教本の判別方法を元にしています。)
この方法なら、同じ握りを再現しやすいです。
また、手のひらの斜めのラインをグリップの面に合わせて握ると、自然と人差し指と中指が少し離れます。
それぞれのグリップを、下記に分けて解説しました。
- グリップの握り方
- 打ちやすい球種
- ラケットダウンとインパクト
- テイクバック
- スイング
- 補足
「ラケットダウンとインパクト」では、フォアハンドストロークの「ラケットダウン」と「インパクト」の1例を入れました。
下記の3つに注目して、それぞれのグリップを比べてみてください。
- ラケットダウン時のラケット面のふせ具合
- インパクトの位置
- スイング方向
「テイクバック」の1例として、ラケットを立てた場合、打球面がどこへ向くのかわかるようにしました。
コンチネンタルグリップ
フォアハンドストロークでコンチネンタルグリップを使う場合、低い打点が打ちやすく、横へのリーチは他のグリップより長くとれます。
グリップの握り方
手のひらの斜めのラインをグリップの②の面に合わせます。
打ちやすい球種
球種は、フラットやアンダースピンが打ちやすいです。(トップスピンも打てなくはない。)
ラケットダウンとインパクト
ラケットダウンのとき、ほとんどラケット面はふせられていません。
前方ではなく、ボールを引きつけてインパクトを迎えます。
ラケットダウンしても、水平に近いスイングなのがわかります。
テイクバック
ラケットを立てて後方へテイクバックすると、ラケット面が打つ方向に対して右側を向きます。
スイング
後方へテイクバックしたところからフォロースルーまで、ほぼ肘を伸ばした状態でスイングします。
後ろからの支えが弱く、相手のハードヒットは返球しづらくなります。
身体が積極的に回るとラケット面が上を向くので、身体の開きを抑えながらボールを引きつけて打つ必要があります。
左手でラケットをキャッチするようにフォロースルーをとると、身体の開きを抑えやすくなります。
補足
普段、ウエスタンのような厚いグリップでも、ボールが届かないときはコンチネンタルグリップに切り替えて返球します。
また、初心者に大きく弾まないボールでラリーしたいとき、コーチが重宝するグリップです。
薄いグリップのプロテニス選手は、コンチネンタルグリップとイースタングリップの中間くらいで握り、手首を深く背屈(手の甲を前腕に近づける)させて打っています。
打ち方的にはイースタングリップに近く、トップスピンもかけられ、フラットドライブで強く叩くこともできます。
イースタングリップ
イースタングリップは、ラケット面と手のひらの斜めのラインが同じ方角を向くため、手のひら感覚で打てるグリップです。
ライジングでボールをとらえるのにも向いています。
グリップの握り方
手のひらの斜めのラインをグリップの③の面に合わせます。
打ちやすい球種
自然なトップスピンはかけやすく、フラットドライブで打つのも比較的簡単です。
ラケットダウンとインパクト
コンチネンタルグリップに比べると、ラケットダウンのときラケット面が少しふせられているのがわかります。
インパクトはコンチネンタルグリップより前方で、おへその高さくらいが打ちやすいです。
スイングでは、緩やかにラケットが上がっているのがわかります。
テイクバック
ラケットを立てたまま後方へテイクバックすると、ラケット面が打つ方向に対して右斜め後ろ側を向きます。
油断をするとインパクトでラケット面が開く(上を向く)ので、テイクバック時にラケット面をふせる意識が必要になります。
スイング
後方へテイクバックしたところからインパクトまで、肘は割と伸ばしぎみです。(多少曲がっているのが伸びていく。)
打ち終わったときに、右肘を前方に向け身体が正面を向くようにします。
フォアハンドスライスを教わると、スイングがごちゃ混ぜになっておかしくなる場合があるので要注意です。
補足
テニススクールで初心者にフォアハンドストロークを教えるとき、イースタングリップが多いです。
コーチがレッスンでデモンストレーションをするときもイースタングリップで見せることが多く、見本には困らないでしょう。
セミウエスタングリップ
セミウエスタングリップは、イースタングリップとウエスタングリップの中間になるグリップです。
ボールの真後ろからラケットを支えることができ、高い打点で強打もしやすいです。
グリップの握り方
手のひらの斜めのラインをグリップの④の面に合わせます。
打ちやすい球種
セミウエスタングリップは、トップスピンもフラットドライブも打てるバランスのとれた握り方です。
ラケットダウンとインパクト
ラケットダウンでは、ラケット面がほぼ真下を向いています。
インパクトは、イースタングリップより高く前方になります。
スイングでは、はっきりとラケットが持ち上がっているのがわかります。
テイクバック
ラケットを立てたまま後方へテイクバックすると、ラケット面が打つ方向に対して後ろ側を向きます。
スイング
後方へテイクバックしたところからインパクトまで、肘は少し曲がった状態です。
セミウエスタングリップくらいの握りだとインパクトでラケット面が開く心配はなくなり、積極的に身体を回してスイングできます。
補足
フォアハンドストロークの主流となるグリップで、プロテニス選手の使用率も高いです。
ジュニア時代グリップが厚かった選手は、セミウエスタングリップもしくはセミウエスタングリップとイースタングリップの間くらいまで握りを修正しているケースが多いです。(高い打点をフラットドライブで叩けなかったり、スピン過多になってしまうため。)
ウエスタングリップ
フルウエスタングリップと呼んだりもします。
ウエスタングリップは、フォアハンドストロークのベースとなる打点が紹介したグリップの中でもっとも高くなります。
ただし、横方向へのリーチは紹介したグリップの中でもっとも短くなります。
グリップの握り方
手のひらの斜めのラインをグリップの⑤の面に合わせます。
打ちやすい球種
ウエスタングリップは、強力なトップスピンがかけられるグリップです。
スピン過多になりやすいグリップなので、回転量を抑えて推進力のあるフラットドライブでボールをコントロールできるかが課題の1つとなります。
ラケットダウンとインパクト
ラケットダウンでは、打球面の裏面がこちらから見えるようになります。
インパクトは、セミウエスタングリップより高くなり、肘がさらに曲がります。
ラケットが下から上に大きく持ち上がり、かなりのトップスピンがかかります。
テイクバック
ラケットを立てたまま後方へテイクバックすると、ラケット面が打つ方向に対して左斜め後ろ側を向きます。
スイング
後方へテイクバックしたところからインパクトまで、肘は曲がった状態です。
打点を十分前にとらないと、ラケット面が下を向いてしまいボールが持ち上がりません。
身体を180度以上回すつもりでスイングします。
補足
ジュニアが高い打点で打ち続けると、グリップが次第に厚くなっていき、ウエスタングリップもしくはそれ以上に厚いグリップになりやすいです。
推進力のあるボールが打てればいいですが、薄い当たり(カスカス)のトップスピンしか打てない場合、グリップを薄くする(例えばセミウエスタン)ことも検討したほうがいいでしょう。
フォアハンドはどのグリップから始めるべき?【すべての握り方をさまよった結論】
テニススクールではイースタングリップからスタートする場合が多いですが、ラケットを地面に置いて上からわしづかみにするよう教わる場合もあります。(本記事だとセミウエスタングリップです。)
4つのグリップをさまよったわたしの考えをまとめておきます。
初心者ならイースタングリップ
初心者の方なら、多くのテニススクールが採用している
をおすすめします。
多くの見本が存在する
イースタングリップには、多くの見本が存在します。
コーチはイースタングリップでのフォアハンドストロークを習得しており、デモを見せるときに使用します。
テニススクールに通っているなら、見本に困らないでしょう。
また、イースタングリップは他の握りより間違った動きを見つけやすく、矯正方法もはっきりしています。
大きなスイングがしやすい
イースタングリップのフォアハンドは、肩を支点にした大きなスイングがしやすいです。
肘を伸ばし気味で打てるため、打点を遠くにとり、大きなスイングでボールを飛ばせます。(ただし、フォロースルーで肘を伸ばす必要はないです。)
グリップが厚くなるほど肘が曲がり、小さなスイングになりやすいです。
手のひらとラケット面の向きが同じ
イースタングリップは、手のひらとラケット面の向きが一致しています。
すなわち手のひら感覚で打つことができ、ラケットを持たない練習でも効果が発揮しやすいメリットがあります。
確かにセミウエスタングリップで握っているプロは多いです。
しかし、そうでない選手も当然いますし、どのグリップが合うかは人それぞれ違います。
セミウエスタングリップのプロ選手も、ずっとそのグリップだったとはかぎりません。
セミウエスタングリップから始めてしまうと、厚いグリップのフォアハンドしか知らずにプレースタイルが固まってしまう危険があります。(グリップは薄くするより厚くするほうが簡単。)
イースタングリップから始めたほうが、自分に合ったグリップに巡り会える確率が高いかと思います。
ソフトテニス経験者には、イースタングリップをおすすめしません。
バックハンドストロークは一から両手打ちを練習することをおすすめしますが、フォアハンドストロークに関してはソフトテニスと同じグリップで始めてみてください。
ボールに強い推進力を与えられることは大きな武器になります。
トップスピンをかける技術を習得すれば、ハードヒットしてもコートに収まるようになります。
ジュニアなら両手打ち
確かに、セミウエスタングリップなら高く弾むボールに対してラケット面を保ちやすく、力のないジュニアにも打ちやすいかもしれません。
ただし、ジュニアのうちからプレースタイルを限定してしまうデメリットがあります。
グリップを厚くするのは比較的簡単(高い打点で打ち続ける)ですが、薄くするのは難しいです。
力がないジュニアの場合、最初はフォアハンドストロークを
から始めるのがおすすめです。
右利きなら、左手をグリップエンド近くでコンチネンタルグリップに握り、右手はイースタングリップで握ります。
打点やスイングが定着しやすい
両手打ちは、両手でラケットを握っているため片手のフォアハンドに比べてリーチが短く、自由度も低いです。
その代わりに、打点やスイングが定着しやすいメリットがあります。
身体全体を使ったスイングが身につく
両手打ちは、身体全体を使ったスイングが身につきます。
両手でラケットを勢いよく振ると、自然と身体も回ります。
ボールを打ちながら、メディシンボールを投げるトレーニングをしているようなものです。(ジュニアなので軽いボールを投げるトレーニングになりますが…)
グリップが厚くなるのを防げる
両手でグリップを握っているため、グリップが厚くなっていくのを多少防ぐことができます。
片手フォアハンドの場合、ラケット面がインパクトで上を向くのを防ぐため、グリップが徐々に厚くなりやすいです。(特に高い打点で打つとき。)
片手のイースタングリップに移行しやすい
両手打ちは、片手のイースタングリップに移行しやすいです。
左手を外してグリップを長く持てば、片手のイースタングリップになります。
後は、片手でラケットを振ることに慣れながら、遠くなった打点や左手の使い方を覚えていけばOKです。
経験者がグリップでさまよってしまったら
最後に、経験者がフォアハンドストロークのグリップで泥沼にハマってしまった場合について書いておきます。
断定はできませんが、わたし自身の経験から
もしくは
のがいいと思います。(ただし、時間はかかります。)
わたしのフォアハンドのグリップは、下記のようにさまよっていました。
- 【10代】
- イースタングリップからテニスをスタート
→徐々にグリップが厚くなりウエスタングリップ以上に
→セミウエスタングリップに修正して安定。 - 【20代】
- クレーコートスペシャリストに憧れてグリップを意識的に厚くする
→再びウエスタングリップ以上に厚くなる
→うまくいかずコンチネンタルグリップでテニスをすることが多くなる
→膝を痛めてテニスから遠ざかる - 【30代】
- ブランク後に再びセミウエスタンに修正して再開
→いくら練習してもうまくならず打感が気持ち悪い
→思いきってイースタングリップからやり直す
→ほぼ毎日練習して半年くらいで安定
→イースタングリップでの経験を生かし同時にウエスタングリップにもチャレンジ
→イースタングリップとの違いを理解して1年くらいで安定
この経験でわたしが学んだのは、下記の3つです。
- コンチネンタルグリップでのスキルは役立たなかった。
- グリップを薄くなると安定するケースが多い。
- フォアハンドがうまくいったきっかけはイースタングリップ
コーチ業の影響で、20代以降ずっとコンチネンタルグリップでつなぐ程度に打つことはできましたが、他のグリップの習得にあまり役立ちませんでした。
打点が違うことはもちろんですが、身体の回転をおさえて打つところが他のグリップと大きく違います。
また、グリップが厚くて不安定の場合、グリップを薄くすると安定するケースが多いと感じました。
慣れるまでかなり大変ですが…
そして、フォアハンドストロークの仕組みがなんとなくわかったきっかけは、わたしの場合イースタングリップの習得でした。
厚いグリップでテニスをしたいけれどどうしたらいいかわからないと悩んでいる場合も、最後の手段としてイースタングリップからやり直す方法があります。
時間はかかると思いますが、試す価値はあります。